研究紹介

消化管グループ

門脈圧亢進症班

門脈圧亢進症グループは、主に肝硬変症に起因する食道・胃静脈瘤に対する治療・研究を行っています。食道・胃静脈瘤は一旦出血すると致死的な転帰をたどることも少なくないため、本邦においては出血する前に予防的治療を行うことが一般的です。そのため予防的治療による偶発症が生じないよう、治療前に詳細な血行動態評価を行い、できるだけ安全で確実な治療を行うように常にこころがけています。
 治療は内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)、内視鏡的硬化療法(EIS)、シアノアクリレート系組織接着剤注入法などの内視鏡治療が主ですが、これらの内視鏡治療に加えIVR治療も行っています。ゆえに、静脈瘤に対する総合的な治療選択を立てることが可能です。特に一般に治療に難渋するとされる胃孤立性静脈瘤や、患者さんの生活の質(QOL)を大きく損ねる肝性脳症(シャント脳症)に対して積極的にバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を行い良好な成績をおさめています。当科でのB-RTOの経験数は200例を超えており、本邦では有数の症例数を誇ります。このほか、部分的脾動脈塞栓術(PSE)も肝癌グループIVR班と共同で治療を行っております。
また、一般病院では治療困難な出血リスクの高い異所性静脈瘤(十二指腸静脈瘤・直腸静脈瘤など)に対しても治療を行っており、県内外から多くの紹介をいただき、当院高度救命救急センターと連携の上、緊急搬送にも対応しています。


診療分野
・食道・胃静脈瘤の診断・治療(内視鏡治療・IVR)
・異所性静脈瘤の診断・治療
・門脈圧亢進症の診断・治療(特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、Budd-Chiari症候群などを含む)
・肝性脳症(シャント脳症)
・門脈血栓症など

研究内容
・門脈圧亢進症の病態生理
・食道・胃静脈瘤に対する治療成績の検討
・B-RTOによる門脈大循環シャント閉鎖の影響の検討
・肝性脳症に対するB-RTOの治療成績の検討
・異所性静脈瘤の病態・治療など
スタッフ

江森 啓悟 井上 博人 久永 宏 國武 泰史

胆膵班

臨床面では、胆道(胆管・胆嚢)、膵臓、十二指腸(主として乳頭部)の良性疾患・悪性疾患の診断と治療をおこなっています。胆道膵臓領域の診断には、腹部エコー、CT、MRI、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)などによる高度な画像診断と病理診断が必要です。当院では、消化器内科医・肝胆膵外科医・放射線科医・病理医・細胞検査士、が週2回の術前カンファランスと月1回の病理カンファランスを行い、各科の垣根を越えた連携を計り正確な診療を目指しています。また治療では、良性の胆道膵臓疾患に対する内視鏡治療を主軸とした内科的治療、進行癌治療では当科の腫瘍内科医が常駐する がん集学治療センターにおいて非切除例に対する全身化学療法、外科治療前あるいは治療後の化学療法、あるいは放射線化学療法などを行っています。現在は、進行膵臓胆道癌の集学的治療プロトコールを各科で共通化しました。

他方、患者様やご家族の十分な理解と合意を最も尊重し医療の提供に心がけています。

研究面ですが、臨床研究を主軸に行ってまいりました。今後は、特に本邦の癌死因第4位となり未だ難治癌の代表格とされる膵臓癌の早期発見と進行癌治療の成績向上を目指し、病診連携事業や基礎的分野との共同研究を積極的に行っていく所存であります。

〔当科で行っている主な胆膵内視鏡関連手技〕
EUS関連(年間約300例)
・管腔内超音波(IDUS)、EUS
・EUSガイド下穿刺術(EUS-FNA)、EUSガイド下ドレナージ術
ERCP関連(年間500〜600例)
・内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)
・内視鏡的胆道ステンティング、膵管ステンティング
・内視鏡的結石除去術
・内視鏡的乳頭切除術(EP)
・経口胆道鏡、経口膵管鏡、など
〔当科で行っている集学的治療〕
・全身化学療法(Gemcitabine, S1, FOLFILINOX, Abraxian, など)
・化学放射線療法(S1併用、など)



診療分野

・悪性の胆道膵臓疾患(腫瘍)の診断と治療
・良性の胆道膵臓疾患(結石、狭窄など)の診断と治療
・胆道膵臓内視鏡診断と治療
(ERCP関連手技、Interventional EUS手技、など)
・進行胆道膵臓癌に対する集学的治療
(抗がん剤治療、分子標的薬、化学放射線治療、など)

研究内容

・EUSによる自己免疫性膵炎の診断
・自己免疫性膵炎の診断、治療と予後
・悪性胆道・膵臓腫瘍の内視鏡的検体採取と採取検体を用いた検討
・胆道腫瘍・非腫瘍粘膜の拡大内視鏡観察
・膵癌早期発見の地域医療連携システム構築
・再建術後胃に対するERCP関連手技
・新規デバイス開発

スタッフ

岡部 義信 石田 祐介 牛島 知之 安元 真希子 阪上 尊彦

消化管腫瘍班

私たちのグループは、主に消化管腫瘍性病変の診断・内視鏡治療・研究を行っています。
診療の対象としている病変は食道表在癌・胃腺腫・早期胃癌・大腸腺腫・早期大腸癌を中心とした消化管腫瘍性病変です。診断は主に内視鏡・X線・超音波内視鏡等の画像検査により行いますが、特に内視鏡に関しては近年機器の著しい進歩により画像の解像度が格段に向上しています。通常白色光観察・色素法観察を基本に、拡大内視鏡観察・NBI(Narrow Band Imaging)等の画像強調観察を加え、病変の正確な存在診断・範囲診断・癌の深達度診断が可能となってきています。
内視鏡治療数は、年間胃ESD約100例、食道ESD約30-40例、大腸EMR約200例、大腸ESD約20-30例と年々増加傾向です。
内視鏡治療症例は治療前の画像所見と治療後の病理所見との対比を行い、久留米消化器病研究会(月に一度当院で開催)等にて症例検討を行っています。
このような症例経験の積み重ねや研究会への参加により、消化管内視鏡検査や消化管X線検査の撮影技術及び形態診断能力を向上させています。
このたび超拡大内視鏡(Endocytoscopy)も導入し、腫瘍/非腫瘍の鑑別、癌/非癌の鑑別などを検討しています。
また九州、全国の研究会への症例提示や学会発表も行っています。
当グループの方針として、若手の先生は、まず消化管腫瘍全般のトレーニングを積み、基本的な診断能力・内視鏡治療を身につけることを目標としています。その上で、上部消化管腫瘍もしくは大腸腫瘍を専門としたグループのいずれかを選択し、更なる診断・治療・研究を追求したスペシャリストを目指します。


診療分野

・上部消化管腫瘍の診断、内視鏡治療
・大腸腫瘍の診断、内視鏡治療

研究内容

・胃腫瘍のNBI診断
・大腸腫瘍のNBI診断
・胃管癌、残胃癌の内視鏡治療
・大腸鋸歯状病変の(鑑別)診断
・内視鏡治療非治癒切除例の予後の検討

スタッフ

鶴田 修 向笠 道太 火野坂 淳 進藤 洋一郎 永田 務 德安 秀紀 森田 拓 草場 喜雄 中根 智幸

炎症性腸疾患班

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD) は腸管に慢性持続性の炎症を引き起こす難病で、発症メカニズムにはまだ不明な点が多く、その解明には基礎研究や臨床研究の更なる積み重ねが必要です。我々のグループは、IBDに関する診療と研究活動をおもな業務にしています。

大学病院では潰瘍性大腸炎 約250名、クローン病 約150名の診療を行っています。“厚生労働省 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班”の指針に基づいて、抗TNFα抗体、免疫調節薬、血球成分除去療法などを用いた最新治療の提供に努めるとともに、国際共同治験を含む数多くの新薬の臨床試験にも参加しています。

日常臨床においては、IBDに特化することなく消化器内科全般についての幅広い知識・技術を有するような医師の育成をめざしています。上・下部消化管内視鏡検査や消化管X線検査などの画像診断にも熱心に取り組んでいます。

研究活動には特に力を入れています。臨床にフィードバックできるような独創的な研究を行なうことを心掛けています。IBDは遺伝的素因、腸内細菌、免疫異常などが複雑に絡む多因子性疾患です。病態解析には多くの分野の専門的知識や技術が必要なため、最先端の仕事を一施設だけで完遂することは困難です。我々は、基礎から臨床に至るまで、国内外のさまざまな領域のエキスパートとの共同研究を積極的に進めています。研究成果は医学雑誌や学会発表を通して世界に発信するように努めており、すでに成果の一部は機能性食品、治療薬、診断薬として実際に臨床応用されています。

学位取得にも豊富な経験と実績があります。先輩医師の熱心な指導により、多くの若い医師や大学院生が基礎研究や臨床研究で学位を取得しています。若い時期に研究を通して養ったリサーチマインドは、その後医師として生きていく上で貴重な財産になるものと確信しています。

平成19年に九州初のIBDセンターが設立されて以来、講座の枠を超えてIBDの診療と研究を行なうことが可能になりました。毎月開催される“IBD合同カンファランス”では、消化器内科、小児科、外科、放射線科、血液内科などの臨床医学講座だけでなく、免疫学、医化学、病理学といった基礎医学講座の先生方も多数参加し、症例や研究についての活発な討論が行なわれています。また栄養士、看護師、薬剤師などのコメディカルの方々と共に“IBDサポートセミナー”を定期的に実施し、チーム医療の質向上に役立てています。さらに“IBDネットワーク”を設立し、関連医療機関との医療連携を効率的に進めていく体制を整えつつあります。

これからも、“基礎から臨床へ、臨床から基礎へ”と双方向の視点を持ちながら診療のできる若い医師を育成するとともに、アジアでのIBDの診療・研究をリードするIBDセンターをめざして頑張ります。

診療分野

・炎症性腸疾患(IBD)
・IBD関連腫瘍
・機能性消化管疾患
・消化管疾患全般

研究内容

・サイトカインシグナルのIBDの病態への関与・治療応用
・神経ペプチドのIBDの病態への関与・治療応用
・腸内細菌のIBDの病態への関与・治療応用
・IBDにおけるアカデミア創薬
・バイオマーカーによるIBDの診断
・分子イメージング・特殊内視鏡を用いたIBDとIBD関連腫瘍の診断
・カプセル内視鏡を用いたIBDの診断
・IBDの癌化機序の解明

スタッフ

光山 慶一 吉岡 慎一郎 桑木 光太郎 山内 亨介 森 敦 
吉村 哲広 荒木 俊博