研究

肝臓研究室

先端的癌・再生研究グループ

先端的癌・再生研究グループ

当グループは、消化器内科の中で基礎研究を中心に行っている研究班です。基本的には私たち消化器内科は患者を診療する臨床科ですが、その中で基礎的研究を行う事は実はとても重要です。臨床の現場で沢山の患者と向き合い、診療をしていますと、様々な疑問や、解決すべき問題に直面します。病気を診断し、治療するという事は、一筋縄でいかない事も大変多く、それらを解決する事で、医学が発展、向上します。臨床研究でそれらを解決できる場合もありますが、基礎研究を行う事でしか根本的に解決できない事も数多くあります。患者の診療を大切にしている当科が基礎研究を行う事で、“今”求められている問題に直結した研究を行う事ができます。臨床に直結した基礎研究を行う事は、やりがいも非常に大きく、社会的貢献度も高いです。
私たちの研究班は、二つの大きなテーマで研究を行っています。それは、“癌”と“再生”です。

“癌”に関しては、肝細胞癌、膵癌など消化器に関連する癌種を対象としています。癌は癌細胞だけでなく、血管内皮細胞、間質を構成する細胞(線維芽細胞)、免疫細胞など様々な細胞によって一つの環境を構成しています。これを癌微小環境と呼びます。我々の研究班は、この癌細胞と癌微小環境の関係を、臨床の癌治療における問題点を通じて、明らかにしていく事をテーマとしています。臨床検体を用いた研究から、癌細胞やその他の細胞を用いた研究、実験用マウスを用いた研究など幅広い研究を行っています。
“再生”に関しては、肝硬変症を血管内皮前駆細胞と呼ばれる幹細胞の力で改善させるというテーマで研究をしています。基礎研究で、血管内皮前駆細胞の投与は肝硬変症を改善させる事が明らかになり、現在は、臨床研究として肝硬変を有する患者に対して治療として、血管内皮前駆細胞の投与を行っています。基礎から臨床へ、臨床から基礎へ、トランスレーショナルリサーチを実践しているのが、我々、先端的癌・再生研究班です。

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脂肪肝・がんリハグループ

脂肪肝・がんリハグループ

当グループは主に下記のテーマについて、全国24施設および米国・欧州・豪州を含む世界32施設と共同研究を推進しています。また、国内外の脂肪肝および肝硬変ガイドライン作成委員として標準的な治療指針の策定にも携わっています。

脂肪肝の新概念 代謝関連脂肪肝(MAFLD)
脂肪肝は成人の25%が罹患しているcommon diseaseです。しかし、未だ承認された治療薬はありません。そのため、新薬開発の加速化や病期進展の予測などを目的に、22カ国の専門家が、代謝異常を合併する脂肪肝を「MAFLD」とする新概念を2020年に提言しました。私たちは、我が国から唯一のInternational Expert Panelとして、この提言に参画するとともに、MAFLDが肝臓の線維化や心血管疾患に深く関係することを、国際学会や英文論文などで発表してきました。また、MAFLDは逆流性食道炎や大腸腺腫の発症とも関連することについても、消化管腫瘍グループと共同で研究結果を報告しています。
消化器がん患者に対する栄養・運動療法の開発と啓発 「肝炎体操」「ヘパトサイズ®」
運動不足や糖尿病などの代謝異常は、脂肪肝の主な原因であるだけでなく、肝硬変や肝がんの病期進展、さらに消化器がん患者さんの生命予後にかかわります。私たちは、当大学の栄養部、整形外科やリハビリテーション部、さらに、佐賀大学医学部、国立国際医療研究センターと共同して栄養・運動療法の開発と啓発活動を行っています。特に、肝臓病に対する運動プログラム「肝炎体操」や「ヘパトサイズ®」はテレビや新聞などでも紹介され、広く利用されています。

肝炎グループ

肝炎グループ

久留米大学病院は福岡県唯一の肝疾患拠点病院として認定されており、当グループでは全国47都道府県71拠点病院と共同研究を行っています。ウイルス性肝炎と自己免疫性肝疾患を主なテーマに取り組んでいますが、稀少疾患や難渋症例も多く入院するため国内外で報告しています。

ウイルス性肝炎
近年、B型肝炎およびC型肝炎に対しての抗ウイルス療法の進歩により臨床経過は劇的に改善しました。B型肝炎に対しての核酸アナログ療法で病態は制御可能となりましたが、本邦における肝発がん例は減少しておらず、長期内服例における副作用も検討すべき課題です。B型肝炎では長期内服例における副作用や肝発がん例の特徴を主に解析しています。
一方、C型肝炎はDAAs(direct acting antivirals)治療によりほぼ99%完治し、非代償性肝硬変まで治療可能な時代となりました。しかし、治療難渋例や肝発がん例が存在し、非可逆性の非代償性肝硬変症例も経験します。当グループでは4000例を超える治療症例を有しており、C型肝炎の残された課題に取り組んでいます。私達は多施設共同研究により得られた多数例のB型肝炎およびC型肝炎のデータベースを作成し、国内外の主要学会や英文論文などで発表しています。
自己免疫性肝疾患
自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎)は比較的稀な疾患で、原因は未だ不明で完治させることができない難病です。当グループでは国内有数の自己免疫性肝疾患の症例数を有しており、多くの臨床データや肝病理組織などから病態解明、治療や効果、長期予後などの研究をしています。また、厚生労働省の難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班にも参加し、自己免疫性肝炎の診療ガイドラインの作成などにも携わっています。
稀少疾患や難渋症例
臨床の現場で対応困難となるような高度肝機能障害、難治性腹水、急性肝不全症例などを多く経験し、臨床研究をしています。また、高シトルリン血症、フォンタン術後肝障害(FALD)、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、Refeeding症候群、TAFRO症候群、POEMS症候群など、様々な稀少疾患や難渋症例の的確な診断と治療を行い報告しています。

肝癌グループ

肝癌グループ

当グループは、臨床を行いながら臨床研究を積極的に行っています。肝細胞癌、肝内胆管癌を対象として、診断から治療に関する様々な研究をテーマとしています。私たちの研究グループの研究の特徴は、豊富な症例経験、治療件数から得られるデータと臨床検体を用いた研究です。診断においては、造影超音波検査を用いた診断、CTやMRI画像に関する詳細解析、人工知能を用いた画像解析に関する研究を行っています。治療においては、薬物療法、カテーテル治療の効果、耐性に関する研究が主体となります。
加えて、先端的癌・再生研究班と協力し、沢山の臨床検体から遺伝子解析、免疫細胞解析などを行い、臨床における問題に直結した臨床研究・トランスレーショナルリサーチに取り組んでいます。
また、国内及び国外の他大学、他研究施設との共同研究も数多く行っており、沢山の研究論文の報告をしており、久留米大学消化器内科肝癌グループから日本全体へ、世界へ、発信する事を目指し、毎日、活き活きと診療・研究に邁進しています。

研究内容

  • 代謝性機能障害に伴う脂肪肝(MAFLD)から発生する肝細胞癌の疫学研究
  • 肝細胞癌に対する薬物療法における造影超音波検査に関する研究
  • 肝細胞癌のCT画像における人工知能を用いた画像解析研究
  • 肝細胞癌に対する薬物療法におけるバイオマーカー探索研究
  • 肝細胞癌に対する薬物療法における効果、副作用、耐性に関する臨床研究
  • 肝細胞癌に対するバルーン閉塞下カテーテル治療における有用性の検討
  • 肝細胞癌に対する複合免疫療法と腸内細菌の関わりに関する基礎・臨床研究
  • 肝細胞癌に対する肝動注化学療法の効果検証前向き試験
  • 肝細胞癌に対する肝動注化学療法のアジア諸国への導入
  • 肝内胆管癌に対する肝動注化学療法の有用性に関する研究
  • 肝内胆管癌に対する分子標的治療に関する臨床研究
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