入局案内

留学

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井出 達也 Roche Molecular Systems アメリカ
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古賀 浩徳 Brown University
(Liver Research Center)
アメリカ
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川口 巧 The University of Texas
Southwestern Medical Center
(Biochemistry Department)
アメリカ
アメリカ

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竹田津 英稔 Cedars-Sinai Medical Center アメリカ
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桑原 礼一郎 Beth Israel Medical Center アメリカ

岩本 英希 Karolinska Institute スウェーデン
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深堀 理 国立がん研究センター中央病院 日本
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大内 彬弘 新潟大学医学部臨床病理学 日本
阪上 尊彦 The Ohio State University Wexner Medical center アメリカ 現在留学中

「ニューヨーク留学記」 平成11年入局 桑原 礼一郎

はじめに

平成17年7月より米国New York州のBeth Israel Medical Center (BIMC) とAlbert Einstein College of Medicine (AECOM) で各々1年間の留学生活を送りました。肝臓の病理診断や肝幹細胞研究に従事させて頂いた2年間にわたるNew Yorkでの研究や生活について御報告させてきます。海外留学を目指す医学生や若手医師の一助になればと思います。

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Beth Israel Medical Center (BIMC)

1年目に所属したBIMCはManhattanのStuyvesantという地域にあるAECOMの病院施設であり、University Hospital and Manhattan Campus for AECOMという別名を持ちます。名前からも容易に想像がつくようにユダヤ資本に運営される病院であり、親日家が多いこともこの病院の特徴でありました。毎年4、5名の日本人医師が主に内科系のResidentとして採用され、3年間の研修プログラムに参加しています。この臨床留学は東京海上火災によって支援されており、N-Programと呼ばれていますが、USMLEの受験から渡米に至るまで東京海上火災のサポートがしっかりしており、アメリカでの臨床研修を目指す日本人医師にはよいシステムのようです。私はこの病院のLiver Pathology Fellowというポジションを得ました。このFellowshipはBIMCの消化器内科と病理部門の合同プログラムであり、3年ないし4年の病理のResidencyを修了した後に、肝臓病理専攻のFellowとしてこのプログラムに参加するのが一般的でしたが、私のように病理の研修歴もUSMLEのCertificationも持たずに、このプログラムに採用されることは非常に稀なことでありました。BIMCで師事したDr. Neil Theiseは肝臓病理や肝幹細胞研究においては世界的権威の一人であり、この1年間は約半日を肝臓病理の診断業務に、残りの時間を実験に費やす日々でした。

肝臓病理

Dr. TheiseのもとにはManhattan周辺の他の施設からも検体が集まり、診断はほぼ肝臓病理に特化して週に50例前後でありました。米国での肝臓病理診断も日本と同様にHBVやHCVなどのウイルス性慢性肝疾患がその多くを占めますが、一方で久留米では見慣れた肝癌の生検には殆んど触れませんでした。これは肥満のために超音波ガイドが使えない患者が多いことや、医療保険の問題のために日本のようには慢性肝疾患患者のフォローが厳重にできないことが大きな要因と考えられます。またHCV陽性の検体は半数近くがHIVとの重複感染がある患者からのものであり、各種の薬物乱用が感染経路になっていることが最大の理由です。多くの薬物乱用者は医療保険を持たず、日本のような厳重な定期検査を受けることができません。日本の将来を垣間見たような気にもなり、一抹の不安を覚えたものでした。肝疾患は民族による背景の差異が大きいため、アジア系には稀な硬化性胆管炎、アンチトリプシン欠損症、ヘモクロマトーシスの症例を目にする機会も少なくありませんでした。さらには非アルコール性脂肪肝炎の多さには驚かされました。ある統計によるとアメリカ人の30%以上でBMIが30を越え、生活習慣病の患者で溢れています。肝疾患の研究や治療が進歩しても、この国ではあまり予後の改善には寄与しないのではと疑問さえ感じたものでした。アメリカでは卒後すぐに病理専修医として研修を開始することが一般的であり、BIMCのPathology Residencyでは毎年4人の採用がありました。この3年間のResidency中に最低1ヶ月は肝臓病理にローテーションがあります。彼らの多くは卒後すぐに病理を専攻しているために臨床経験が殆んどなく、彼らに臨床に関する質問を受ける機会が度々ありました。英会話の鍛錬には、この時間が最も役に立ったような気がします。

Stem Cell Research

Dr. Theiseの有名な業績の中に、骨髄細胞から肝細胞への分化を世界で初めて報告した研究があります1), 2)。一貫して彼の興味の中心にあるのは、末梢胆管(ヘリング管)に存在し肝細胞と胆管細胞への分化能を有するOval cellです3)。そのため、私の研究も肝臓内のHepatic stem cell nicheの探索がテーマとなりました。大学院時代より多くの劇症肝炎や急性肝不全の症例を経験させて頂き、臨床においても肝再生への関心は非常に高かったため、肝再生の本質に迫るこのテーマは私にとって非常に恵まれたものでありました。肝臓においては数種のHepatic stem cellの候補はあるものの、その特定は未だされておらず、その多くの研究はFlow cytometryやVitroでの細胞培養を用いたものが中心でありました。そこで私たちは、Label-Retaining Cell assayという完全に形態学に特化したVivoの 切り口でこのHepatic stem cellの同定を試みることになりました。欧米においては急性肝不全の約半数はアセトアミノフェンによる肝障害が原因であり、臨床的なニーズも考慮し、この実験系にはマウスのアセトアミノフェン肝不全モデルを用いることとなりました。ちなみに米国、英国で急性肝不全の原因で最も多いのはアセトアミノフェン肝障害です。このLabel-Retaining Cell assayという手法は、細胞が比較的早いturnoverを繰り返す臓器(例えば消化管上皮など)での肝細胞検索に用いられている技法でした。この実験法を肝幹細胞検索に用いるためには、通常は20000分の1程度の細胞のみしか分裂をしていない肝臓に人為的に障害を加え、その際に分裂する細胞をラベルする必要がありました。次にこのすべてのラベルされた細胞の中から効率よく幹細胞のラベルだけを残すために、再度人為的に肝障害を加える必要がありました。過去にはこの実験法を用いた肝幹細胞の研究は報告がなく、さらに肝障害の成因によって肝臓内での細胞障害のされ方に相違があることから、この実験系での至適条件を決定できるまでに1年以上の時間を費やしました。実験系が完成してからは、比較的単純なBrdUとPan-Cytokeratinの二重免疫染色によってOval cellを含めた肝幹細胞の候補となっている細胞のCell Kineticsを調べました。障害肝の中では肝再生はMulti-lineageであることを示唆する結果を得ることができ4)、米国肝臓学会雑誌の表紙を飾ることができました。留学後に飛び込んだ新たな領域での仕事でしたが、久留米大学で多くの肝不全症例を経験したことが、肝臓病理の勉強においても幹細胞研究においても礎になってくれたことを実感します。肝不全に対する最終的な治療は肝臓移植というのが世界的な現状であるが、生体肝移植においても健常者ドナーにメスが入ること、脳死肝移植においても臓器不足や日本人特有の倫理観などの様々な問題が依然として残っています。再生医療やCell Therapyが肝疾患の領域のみならず多くの疾患の治療法として確立されることが期待されていますが、ES細胞や最近の話題の中心であるiPS細胞だけではなく、肝臓内に潜むHepatic stem cellのCell biologyやphysiologyの解明が、今後の肝再生医療に不可欠であると思います。

Albert Einstein College of Medicine (AECOM)

BIMCでの1年間のFellowshipを修了し、2年目はNew York郊外BronxにあるAECOMで博士研究員(Postdoc)として働くことになりました。この移籍先を探すに際しては様々な交渉を自分一人で進めなければならず、留学中で最も苦労と心労を伴いました。しかし、現在となってはこの異国の地での「就職活動」は貴重な経験であったと感じます。AECOMはYeshiva Universityというユダヤ系の大学に設置されたMedical Schoolで、ユダヤ系のAlbert Einstein博士の名前を冠して1955年に開学した歴史があります。AECOMではDepartment of Radiation Oncologyの研究室に職を得ました。この研究室はAECOM内のMarion Bessin Liver Research CenterのMember Laboratoryであり、これが移籍先を選ぶ際の動機となりました。センターにはDavid Shafrits、Allan Wolkoff、Sanjeev Gupta、Jayanta RoyChowdhuryといった著名な肝臓学者が研究室を持っており、センター合同のセミナーは非常に緊張感のあるものでした。このRadiation Oncologyでは、Cell transplantationと放射線照射を組み合わせた肝再生治療、血管新生抑制物質と放射線照射を併用したガン治療などの動物実験に従事しました。殆どの研究テーマは数人で分担させる方針で進行し、それぞれが得意な実験(私の場合は免疫染色など)を担当させるという方針であったため、それまではまったく無知であった分野の実験に参加することが多く、肝臓病に限らずに知見を広めるのに役に立ったように思います。

世界の中心で生きてみて

New Yorkで生活をしていると、アメリカ最大の都市というより、むしろ世界の中心都市にいることを実感しました。このNew Yorkの研究施設では、米国籍の研究者がいない研究室も多数あります。New Yorkはまさに人種の坩堝であり、100以上の民族が生活をしています。New Yorkにはあらゆる文化を飲み込んでいく懐の深さがあり、その多様性と自由の精神がこの街の力の源であることも強く感じました。多くの人種が共存する一方で、自分達のルーツに誇りを持って生活していることに畏敬の念を抱きました。世界で最もホットな街に留学したことで人生観が変わったような気もします。

おわりに

Dr. Neil Theiseが「臨床医の将来に役立つ基礎研究を」と研究指導をしてくれたことが、New Yorkでの研究生活を充実したものとしてくれました。臨床で生じた疑問が基礎研究への意欲となり、また基礎研究を行うことで疾患への理解を深めることができると思います。医学生や若手医師には、数年間であっても臨床から離れて基礎研究に携わってみることを強くお勧めします。異文化に触れて生活できることも留学の大きな魅力です。所属する消化器内科の教室には臨床と研究の両方に取り組める環境があり、国内外への臨床留学や研究留学の経験者も多く所属しています。消化器領域に興味を持った若手医師や医学生の数年先のキャリアのために、久留米大学消化器内科は多くの選択肢を用意できる教室であると確信しています。

「カロリンスカ研究所留学記」 平成19年入局 岩本 英希

留学のきっかけ

久留米大学消化器内科での後期研修を終え、肝臓癌に興味があった私は消化器内科の大学院に入学しました。基礎研究で大学院へ入学する場合は、臨床から離れ、基礎研究のみを行う事も多いのですがが、久留米大学消化器内科の大学院では大学に来られる様々な疾患、病態の患者様に触れ、深い臨床経験を積みながら、基礎的な研究をすることができます。私の場合は、進行期の肝臓癌に対する血管造影を用いた治療を大学で専門的に習得しながら、肝臓癌の血管新生について基礎的な研究を行い、学位を取得しました。臨床を行いながら、基礎的研究を行うことで、実際の診療現場で出会う様々な問題、疑問を基礎的研究で解決する事ができるのです。大学院で臨床と研究を行っていましたが、次第にその経験・知識をどのように世界に発信、表現するべきか?、世界に通用する研究レベルとは何か?と感じるようになり、海外での留学経験を積みたい気持ちが日に日に増していきました。そういう気持ちが高まる中で、消化器内科主任教授である鳥村拓司先生がスウェーデン、ストックホルムにあるカロリンスカ研究所のYihai Cao先生と2006年に共同研究をし、Gastroenterologyに論文が掲載されていたという経緯もあり、2012年に客員研究員として有給で雇用して頂けることになりました。

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カロリンスカ研究所、Yihai Cao研

カロリンスカ研究所とは、医学系の単科教育研究機関としては世界最大規模の研究機関であり、教育・研究機関として世界有数の施設の一つです。カロリンスカ研究所はノーベル生理医学賞の選考委員会を有し、毎年数多くの各分野の世界トップレベルの研究者が頻繁に訪れ、講演が行われます。カロリンスカ研究所には様々な分野の研究棟があり、その中でも最も業績豊富な研究棟の一つとされるMicrobiology Tumor and Cell Biology(通称、MTC)が私の所属した部門です。そのMTCの中でも最もアクティブに活動している研究室がYihai Cao研です。

Yihai Cao先生は今の癌治療のトピックの一つである血管新生抑制治療の世界的権威の一人であり、毎年数多くの研究成果を科学界のトップジャーナルに発表しています。その様な世界でも有数の研究室で働く事が出来たのはとても幸運な事でした。現在の医学における疑問や問題を、最先端の実験方法で解決し明らかにしていく、そしてその研究成果を世界に発信するというとても貴重な経験を積むことが出来ました。また、高い志を持った各国の仲間を得る事が出来たのも非常に大きな財産です。カロリンスカ研究所には日本から留学してくる方も多く、日本国内のトップクラスの大学からの優秀な研究者とも肩を並べて仕事をすることが出来たことは貴重な経験でしたし、自信にもなりました。

留学生活の実際

留学というとキラキラと楽しいイメージもありますが、スウェーデンでの留学生活は決して気楽なものではありませんでした。まず環境が日本と全く異なります。冬は日照時間が1時間を切る事もあり、気温は最低で-20度です。太陽が出ると拝みたくなる気持ちになります。当たり前のものが当たり前ではないという事を実感できました。しかし一方で、春から夏にかけては天国です。冬を耐えきった者だけが感じる事ができる喜びです。湿度は低く、気温も20度前後、あの爽やかな日差しは一度味わったら忘れられません。
また、スウェーデンは世界最高の福祉国家として知られています。私の様な海外からの研究者にも、医療保険、子ども手当て、住居手当て、将来の年金など、スウェーデン国民とほぼ同等の権利が得られます。この点は保険などの身分保障が弱いアメリカへの留学よりも優れた点と言えます。福祉等の充実に対して、所得税、消費税が高く、物価も高いので、その点は生活するに厳しさもありました。

Yihai Cao研での研究生活も世界に発信していく事を使命としているだけあって、求められる量も多く、質も高く、とてもハードなものでした。いわゆる研究漬けの生活です。しかし、留学前からそのつもりで渡瑞していましたので、やる気を持って、やりがいを持ってその生活を楽しむ事ができました。その結果もあって、留学中の研究成果として筆頭著者で1報、共著者で4報を論文報告する事が出来ました。今後も継続して数報、世界に発信する事が出来ると思います。厳しい環境での辛い経験も成果に結びつけば良い思い出になるものです。

留学は家族の絆も深まります。家族それぞれにとっての大きな挑戦をみんなで協力して乗り越えるからです。ハードな生活とは言え、日本での医師としての生活に比べると、子供達と一緒に過ごす時間も作れましたので、その点も充実した生活を送れました。また、スウェーデンから中央ヨーロッパ、北欧には飛行機で数時間で行けますので、イースター休暇、夏休みなどの長期休暇には家族でヨーロッパを回りました。日本に住んでいますと、その様な経験はなかなか難しいと思いますので、貴重な経験をさせて頂いたと感謝しています。

久留米大学消化器内科の魅力

久留米大学消化器内科の魅力として、私が思う一番の魅力は“柔軟性”だと思います。私の様に大学院での基礎研究を選びながらも、臨床で実際の患者様の治療にも携わる事が出来たこと、ステップアップの為の海外留学にもスムーズに移行する事が出来たこと、この様な自分の希望に沿った道を選ぶことができる“柔軟性”は他の診療科、大学にはなかなか難しい様です。留学から帰国した後も、臨床で肝臓癌の患者様を治療しながら、基礎研究を行える環境を与えてもらっています。今後も臨床で巡り合った問題、疑問を基礎研究を通して解決していき、研究の為の研究ではなく、患者様の為の研究をしていきたいと思っています。この様な臨床と直結した基礎研究を続けていく事は一人の力では限界があります。興味・意欲のある若い医師と一緒にチームとしてその限界を広げていく事が出来るととても嬉しいと思います。